UNEPが警鐘 世界の天然資源使用量が約50年で3倍以上に急増

国連環境計画(UNEP)は、本年3月発表の「Global Resources Outlook(地球資源概況)2019」で、世界の天然資源使用量の急増に対して警鐘を鳴らしました。

今回はUNEPの概要と共に、今回の報告の主な内容をご紹介します。

 

 

 

1. 国連環境計画(UNEP)とは

UNEP(United Nations Environment Programme、国連環境計画)は、1972年6月にストックホルムにおける国連人間環境会議で採択された「人間環境宣言」及び「環境国際行動計画」を実施に移すための機関として設立された、地球環境保護に取り組む国連の中核機関です。本部はケニアの首都ナイロビにあります。

国連の諸機関による地球環境保護に関する活動を、管理・調整しながら国際協力を推進するために、「気候変動、災害・紛争、生態系管理、環境ガバナンス、化学物質・廃棄物、資源効率性、環境レビュー」の7つのサブプログラムを中心に活動しています。

以下に、UNEPの主な活動、トピックスを記します。

 

ウィーン条約、モントリオール議定書の採択の主導

UNEPは、1985年3月22日に採択された「オゾン層の保護のためのウィーン条約」、及び1987年9月16日に採択された「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」の採択を主導しました。

「国連環境総会」(UNEA)の開催

2012年開催の国連持続可能な開発会議(リオ+20)において、UNEPは「世界の環境アジェンダを設定する世界の主たる環境当局」とされ、意思決定機関を、全国連加盟国が参加する「国連環境総会」(UNEA)とする旨が決議されました。この国連環境総会は原則2年に1回開催される国際会議です。

2. 「Global Resources Outlook(地球資源概況)2019」の概要

UNEPは、2019年3月に「Global Resources Outlook(地球資源概況)2019」を発表し、地球温暖化などの気候変動や世界の生物多様性の喪失の主な原因となっている、世界の天然資源使用量の急増に警鐘を鳴らしました。

 

天然資源の抽出量の急増と地球環境への影響

本概況によれば、1970年以来、世界的な物質の抽出量は、270億トンから2017年には920億トンと3倍以上に増加し、その内訳として非金属鉱物は5倍、化石燃料は45%の増加となりました。現在の傾向が続けば、2060年までに世界の物質使用量は920億トンから約2倍の1,900億トンとなり、温室効果ガスの排出量は43%増加する可能性があることから、気候変動への影響は深刻とされています。

また2015年から2060年までに、天然資源の使用は110%増加し、森林は10%以上の減少、草地のようなその他の生息地については約20%の減少につながると予測されています。

主な要因

本概況では、世界的な物質の抽出量増加の主な要因として、2000年以来の、主としてアジアの新興国におけるインフラへの大規模な投資と共に、食料、原材料、エネルギーを大部分とした生活水準の向上を挙げています。

資源効率と循環的な流れへの移行を推進

こうした状況を受け、本概況では、資源効率が不可欠であると主張し、製品ライフサイクルの延長、インテリジェントな製品設計、標準化と再利用、リサイクル、そして再製造の組み合わせによる、直線的な流れから循環的な流れへの資源利用の移行推進を促しました。概況の序文でも「国際資源委員会が実施したモデリングは、適切な資源効率と持続可能な消費及び生産政策が整っていれば、2060年までに世界の資源利用の伸びは25%減速する」と述べられています。

【参照】