エアコンやターボ冷凍機などの空調機器は、冷媒と冷凍サイクルを利用することで、冷たい水や空気を作り出しています。
ここでは、物質の状態変化と圧力の関係を含めた空調の冷凍サイクルについて解説します。
エアコンやターボ冷凍機などの空調機器は、冷媒と冷凍サイクルを利用することで、冷たい水や空気を作り出しています。
ここでは、物質の状態変化と圧力の関係を含めた空調の冷凍サイクルについて解説します。
アルコールで体を拭くと、冷たく感じますよね?これは、以下の原理で冷たく感じています。
液体が蒸発(気化)するとき、周囲の熱を奪う性質(気化熱)があります。冷媒を使用した冷凍機の冷却も、この原理を利用しています。アルコールは体に触れると大気へ放散しますが、冷凍機の場合は、密閉された容器の中で、冷媒に同じことを繰り返し起こしています。例えるなら、蒸発したアルコール(冷媒)をもう一度液体のアルコール(冷媒)に戻す、そしてまた気体に、この繰り返しを「冷凍サイクル」と言います。
次に、熱には大きく分けて二つの分類「顕熱(けんねつ)」と「潜熱(せんねつ)」があります。
「顕熱」は、約20℃の常温の水を100℃まで温度を上げる、物体を「暖める」のに使用する熱量です。熱を与える対象物の「温度」は変化しますが、「状態」は変化しません。
一方「潜熱」は、100℃の水を100℃の水蒸気に変える、状態が「変化」するために使う熱量です。熱を与える対象物の「状態」が「液体」から「気体」に変化しています。潜熱にはさらに下記5つの分類があり、アルコールの蒸発は潜熱の中の「蒸発熱」に当たります。
水の沸点は一般的に100℃ですが、富士山の頂上では大気の圧力(気圧)が低いため88℃付近になります。よく、高い山でお米を炊くと芯が残ると言われるのは、沸点が低いために生煮えの状態になるためです。
では逆に、地上で圧力鍋を使い水を沸かすとどうなるでしょう?圧力にもよりますが、沸点は上昇します。圧力鍋で料理をすると早く煮えるのは、内部の圧力を高めることで水の沸点が100℃以上に上昇し、高温で料理ができるためです。
ターボ冷凍機や家庭用エアコンでは、この圧力と物質の状態の関係を利用し、機械内部の冷媒の圧力を変えることで冷水や涼しい風を作ります。この圧力差を作り出すために、電気による動力を利用した圧縮機(コンプレッサ)を用います。
ターボ冷凍機やエアコンは、圧力と物質(冷媒)の状態を利用し、冷媒を器内に循環させています。この冷凍サイクルには4つの圧力・状態変化行程があります。家庭用エアコンの冷房運転で例えてみましょう。
圧力変化があるのは圧縮行程(圧力を高める)と膨張行程(圧力を下げる)、一方、冷媒の状態変化があるのは蒸発行程(液体→気体)と凝縮行程(気体→液体)となります。但し、家庭用エアコンの暖房時の行程は異なります。
ターボ冷凍機や家庭用エアコンは、器内から冷媒が漏れないという前提であれば、運転中は永久機関で上記サイクルを繰り返します。大型の冷凍機から小型の家庭用エアコンを含めた空調関連機器や、冷蔵庫、冷凍庫などでも冷凍サイクルは利用されています。
それは、状態変化と圧力の関係を容易に作り出せることが最大の条件となるからです。機械的な条件においては、圧縮機で作り出せる圧力差が最大のポイントとなります。
1900年代前半に使われた冷蔵庫のほとんどはアンモニアによる冷凍サイクルを利用したものでしたが、アンモニアは毒性が強いため、無害な代替品の開発が行われた結果、フロン(CFC-12)ができたと言われています。そのフロンも現在は地球温暖化対策の観点から、ノンフロン化への転換が迫られています。
では水やアルコールは冷媒として使えないのでしょうか?水の場合、一般的にターボ冷凍機やエアコンといった機械は金属(鉄や銅)でできているため、水が空気に触れて金属が酸化(錆の発生)してしまうという欠点があります。さらに圧縮機で必要な圧力差を作り出すことが非常に難しいため、冷媒としては適していません。アルコールの場合は引火する危険性があります。
機械にダメージを与えない、引火・発火しない、機外に放出しても人体に瞬時に害がない、等の様々な安全面も含めて、各種フロンが使用され、そして現在ではさらに環境への配慮からノンフロン化が推進されています。
※アンモニアは現在でも安全面を十分に配慮した上で冷媒として使用されています。