データセンターに最適な冷却装置は、空冷チラー、水冷チラー、どちらでしょうか?答えはひとつではありません。
空調システムの設計者は、最適なタイプのチラーを提案する前に、多くの質問をする必要があります。利用可能な面積、バックアップ電源、電力や水の使用を制限する地域の規制、オーナーの持続可能性の優先順位など、プロジェクト特有の要因によって、ほぼ決定と考えられていた機器の選定が覆されることもあります。
データセンターは設計の前段階で空調会社と相談し、短期的および長期的な目標を満たすソリューションを確認することが理想です。もしあなたがデータセンターのために決断を下すのであれば、各タイプのチラーに特有の長所と短所を理解しておくことが役立ちます。
容量
空冷パッケージチラーは、7.5~500トン(25~1,580 kW)、一方、水冷パッケージチラーは、10~4,000トン(35~14,000 kW)が一般的です。つまり、水冷チラーは、より少ないユニット数、より小さな設置面積で、より大きな冷却能力を発揮することができます。
メンテナンス
空冷チラーには冷却塔が不要ですが、水冷チラーには冷却塔が必要な上、水処理、冷凍機のコンデンサーチューブ洗浄、冷却塔のメンテナンス、凍結防止などの重要な保守点検も必要になります。開放型の冷却塔を使用するシステムでは、バクテリアや藻などの汚染物質を防ぐための水処理対策、また、冷却塔は水を蒸発させるので、蒸発した水を補うために大量の補給水を確保する必要があります。
場所
安価な電力と低税率の追求は、データセンター業界のトレンドを一変させ、ユーザーから遠く離れた場所に巨大な施設を置くことになりました。空冷チラーは、気温が氷点下になるような場所に設置すれば、厳冬期のクーリングタワーの運用に伴う問題が解消されるため、運用しやすくなります。クーリングタワーは、氷点下で安全に運転するための特別な制御シーケンスやヒーター、さらには屋内汚水槽を必要とする場合もあります。
エネルギー効率
水冷チラーは一般的に空冷チラーよりもエネルギー効率が高くなります。空冷チラーの冷媒の凝縮温度は、周囲の乾球温度に依存します。水冷チラーの凝縮温度は、凝縮水温度に依存し、凝縮水温度は周囲の湿球温度に依存します。湿球温度は乾球温度よりもかなり低いことが多いので、水冷チラーの冷媒凝縮温度(および圧力)は空冷チラーよりも低くすることができます。凝縮温度が低い、つまり凝縮圧力が低いということは、圧縮機の仕事量が少なくてすむことを意味し、その結果、エネルギー消費量も少なくなります。ただし、夜間は太陽が沈むと乾球温度が湿球温度よりも早く下がる傾向があるため、この効率の優位性は低下する可能性があります。
納入と設置
空冷チラーの多くは「一体型システム」です。凝縮器、圧縮機、蒸発器を含むシステムは、最適な性能と信頼性が得られるように工場で設計・構成されているため、設計・納入期間が短縮され、設置も簡単です。水冷チラーの場合は、冷水の配管、ポンプ、冷却塔、制御装置などの複雑な要素が加わります。
機器寿命
技術の進歩とデータ処理量の増加に伴い、データセンターのインフラは、これらの進歩を担保しつつ、安定したパフォーマンスを提供する必要があります。一般的に、空冷チラーは15〜20年、水冷チラーは20〜30年と言われています。
これは、水冷チラーが一般的に屋内に設置され、低い凝縮圧力で運転されるのに対し、空冷チラーは屋外で高い凝縮圧力で運転されることが理由の一つです。
節水
水の利用可能性、コスト、処理の必要性、さらには工事の複雑さなど、すべてがシステムの選択に影響します。空冷チラーは水を必要としないため、水不足の地域や水が非常に高価な地域では、空冷チラーが好まれることが多くなります。
水は、データセンターが消費する2つの主要資源のうちの1つです[1]。米国のデータセンターでは、2014年に6,260億リットルの水が消費されました。これには、データセンターで直接消費された水と、データセンターを動かすための発電に使用された水が含まれます。しかし、このレポートで指摘されているように、データセンターを冷却するための水よりも、データセンターに電力を供給するための発電に使用される水の方がはるかに多いため、冷却装置の効率が再び考慮されることになります。
まとめ
空冷チラーには、メンテナンスコストが低い、パッケージ化されているので設計・施工が容易、氷点下での性能が高い、などのメリットがあります。
水冷チラーは、エネルギー効率が高く、容量が大きく、機器の寿命が長いなどのメリットがあります。
しかし、プロジェクトに最適な選択は、まったく別の判断基準によっても決まることがあります。データセンターやシステム設計者は、すべての要素を考慮し、最終的に指定されるチラーが長期的にすべての目的をバランスよく満たすようにすることが重要です。
[1] Sverdlik, Yevgeniy, Data Center Knowledge, July 2016「米国の全データセンターが消費する水の量について」
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