迷信と事実:ヒートポンプの価値を理解しよう

脱炭素化に向けて、電気化を考えることは正しいステップなのでしょうか?
ヒートポンプにまつわる5つの迷信をトレインのエキスパートが解き明かします。

Jackie Sopko、チラー商品化サポートリーダー
Brian Fiegen、システム開発リーダー
Eric Sturm、リード・アプリケーション・エンジニア

2023年5月25日

商業施設では、冷暖房がCO2排出量の30%を占めています。 脱炭素に向けて、ビルオーナーは、建物の暖房に使用する熱源を、ガス燃焼器などの化石燃料からヒートポンプなどの電化空調機器に移行しています。ヒートポンプは1950年代に登場し、北米ではここ10年で住宅用、商業用ともに利用が拡大しています。商業用システムには、パッケージ型ルーフトップ・ユニット、直接膨張式スプリット・システム、VRFシステム、空気熱源、水熱源、蓄熱式ヒートポンプなどがあります。米国では、技術の進歩に加え、ヒートポンプに関するインセンティブや規制が追加されたことで、商業ビルの脱炭素化に向けた道が開かれつつあります。

脱炭素、つまり二酸化炭素排出量の削減や排除を目指す取り組みを考える上で、冷房(空調)はすでに電気化されていることを認識することが重要です。企業や家庭からの温室効果ガス排出は、主に熱源として燃やされる化石燃料から発生します1。ビルの暖房に電気を使用している場合には、グリッド(エネルギー供給網)に再生可能エネルギーが増えるにつれ、ビルの暖房によるCO2排出量は減少し続けるでしょう。建物の電気化は、再生可能エネルギーがグリッドの大部分を賄うという脱炭素の未来に向けた重要な一歩です。

2020年には1億8,000万台近くのヒートポンプが暖房に使用され、世界のヒートポンプのストックは5年間で年率10%近く増加しました2。ヒートポンプの普及は目覚しいものがありますが、エンドユーザーの認識と受容はまだ始まったばかりです。建物のCO2排出量をネットゼロにするためには、ヒートポンプの設置台数を世界で6億台まで増やす必要があります3。ヒートポンプは、熱の電気化のための効果的なソリューションであり、ネットゼロの目標を達成するための道筋であることが証明されていますが、迷信と事実を見分けることが重要です。

迷信:ヒートポンプは熱を供給するだけ。
事実:ヒートポンプは暖房も冷房もできます。

ヒートポンプは、空気中や地下から熱を取り出し、寒い季節にはその熱で建物を暖める仕組みになっています。暖かい時期には逆循環し冷媒で建物を冷やします4
ヒートポンプが建物の暖房や冷房に利用しているのは、蒸気圧縮と呼ばれるこの可逆的なプロセスです。

 

迷信:ヒートポンプは寒冷地では機能しない。
事実:ヒートポンプは寒冷地でも十分な性能を発揮します。

技術の進歩により、ヒートポンプは外気温が氷点下でも動作するようになりました。ハイブリッド車のように、デュアルフューエルと呼ばれる補助熱を備えたヒートポンプは、外気温が一定の設定温度まで下がるまでは電気を主暖房として使用し、最も寒い時期にはガス熱に移行します。ヒートポンプから天然ガスへの切り替え温度は、快適性、投資回収率、排出量削減目標のバランスに応じて、約7.2℃から-9.4℃の間で調整することが可能です。ヒートポンプは、気候や建物のニーズに合わせて設計された大型システムの一部として使用されることが多いです。

 

迷信:ヒートポンプは高すぎる。
事実:ヒートポンプは一般的な代替暖房システムよりも高価ですが、省エネに寄与する場合補助金などが用意されています。

省エネルギー投資促進に向けた支援補助金、省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金、省エネルギー・需要構造転換支援事業費補助金などは、ビルオーナーが利用できる資金源の一部です。燃料の二重化、バックアップシステムの使用、機器の「正しいサイズ」、建物に対する適切なニーズを特定することで、ヒートポンプに係る料金を削減することができます。

 

迷信:ヒートポンプはエネルギーコストの削減に寄与しない。
事実:ヒートポンプは、代替の電気暖房方式よりも最大で3倍の効率が期待できます。5 電気代と代替の化石燃料暖房のコストが、エネルギー代への影響を決定します。

ヒートポンプは効率よく加熱することができ、制御装置*の進化により、さらに高い効率が期待できます。制御によりエネルギー効率の高いシステムは、エネルギーの損失を減らし、無駄なコストを削減することができます。また、ヒートポンプはガス暖房と組み合わせることができ、使用条件に応じて最も費用対効果の高い燃料を選択することができます。建物のエネルギー料金は、地域のガスや電気の公共料金によって異なりますが、より有利な地域もあります。

*Project Drawdownの科学チームが行った調査によると、ビルディングオートメーションシステム(BAS)は、冷暖房効率を20%以上高め、照明や電化製品などのエネルギー使用量を8%削減することができます6

 

迷信:ヒートポンプは環境に良くない。
事実:ヒートポンプは、以前にも増して再生可能エネルギーを使用する事によって環境性能が高いです。

パワーグリッド(送電網)*に再生可能エネルギーが増えれば、電力使用による排出量は減少します。つまり、風力、太陽光、水力、原子力など、よりクリーンな電源から発電された電力を使用する場合、化石燃料を使用した熱源から電気ヒートポンプに移行することで、間接的な二酸化炭素排出を削減できるのです。

*ヒートポンプで達成できるエネルギー消費効率(COP)には幅があるため、その影響は地域のグリッドの炭素強度7に依存します。

 

熱の電気化は、ビル運営の脱炭素化に向けた重要な一歩です。ヒートポンプは、ガス焚きボイラーに代わるエネルギー効率の高い選択肢を提供します。ヒートポンプの普及は、二酸化炭素排出量の削減に大きな影響を与え、よりクリーンなパワーグリッドに貢献し、ネットゼロの目標達成に寄与する重要な可能性を秘めています。

トレインは、エネルギーテクノロジーとビルディングソリューションの世界的リーダーです。当社の専門家チームは、まずビルのオーナーやエンジニアと協力し必要スペースの確認をいたします。そして、アプリケーション中心の戦略を開発しながらエネルギー効率と持続可能性を向上させ、最終的には、快適な室内環境を実現するソリューションを作り出します。また、エンドツーエンドで結果を出すために、継続的な最適化とモニタリングを行います。お客様のタイムライン、予算、目標に合ったプランを作成するために、今すぐトレインの担当者にご連絡ください。

 

※一部日本向けに内容を変更しております