店舗や事業所、工場などにおけるエネルギー使用量をどのようにコントロールするか、これはどの企業にとっても重要な課題ではないでしょうか。特に、エネルギーを一元管理して最適化するエネルギー・マネジメント・システム(EMS)が注目を集め、導入事例も多くなってきています。
EMSは、省エネルギーを目的としてそれぞれの企業が導入した設備を統合的に管理するシステムです。個々の設備やシステムにおける省エネ機能を組み合わせて、最大の効果を発揮するための調整を行います。そのためには、総合的な視点でサービスを提供できるサポート役が必要になります。そのサポート役を担うのがエネマネ事業者です。
エネマネ事業者にサポートを依頼するメリットとは?
企業が取り組もうとしている省エネルギー関連の設備やシステム導入に対して、経済産業省から最大3分の1の補助金が交付される「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」があります。この補助金制度に関して、企業がエネマネ事業者からのサポートを受ける場合には、補助金が最大2分の1になります。
エネマネ事業者がサポートする内容はEMSの設置、エネルギー管理支援サービスの提供の他、補助金申請に必要な事務作業のサポートなどです。例えば、補助金事業を管轄する一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)に提出する申請書類の作成・提出の代行をします。申請に必要な省エネルギー計算などについて、国家資格であるエネルギー管理士が書類作成を行います。
補助金事業に関してSIIが検査を行う際に、連絡や調整などを行う窓口役も担当します。
エネマネ事業者に必要な要件とは?
このようにエネマネ事業者は、省エネに積極的に取り組もうとしている企業と公的機関をつなぐ、重要なパイプ役を担います。したがって、エネマネ事業者として企業のサポートをするには、年度ごとにSIIが公募するエネマネ事業者登録に採択されなければなりません。
エネマネ事業者として登録されるには、企業として事業基盤や信頼に不安のないことが前提です。そのうえで、EMSの提供とエネルギー管理を支援する4つのサービスを行うことが必要です。
- 見える化サービス: 電力使用量のリアルタイム計測(30分間隔)
- DRサービス(デマンドレスポンス・サービス): エネマネ事業者側の操作により系統電力の使用量の抑制を図るサービス
- 診断サービス: 省エネ診断報告書などの提供と継続的な省エネアドバイスや設備・システム更新の提案サービス
- 省エネサービス: 確実な省エネを実行するためのアドバイスやチューニング、ESCOなどの実施
EMSができることは?
EMSが導入された建物では以下のような省エネ・エネルギーコントロールが可能となります。
- 空調機器の自動最適運転
- 照明機器の自動最適制御
- 設備機器のスケジュール運転
- エネルギー消費量の管理、分析、最適化
- デマンドレスポンス(電力需給逼迫時の電力消費抑制など)
今後ますます需要が高まるエネマネ事業者
経済産業省では、平成27年度予算でエネルギー使用合理化等事業者支援補助金を倍増させる方針を打ち出しました(「平成27年度 資源・エネルギー関係概算要求の概要|経済産業省」PDF)。
また、資源エネルギー庁では世界標準規格であるISO50001(エネルギーマネジメントシステム)を導入し、企業の省エネ・節電に活用するよう積極的に働きかけています。
東日本大震災後の電力事情の変化や、地政学的リスクの高まりなどによる化石燃料の供給不安で、日本では省エネルギーに対する取り組みの強化は必至です。
補助金を利用しながら、設備やシステムの更新やプロセスの改善といった効果的な省エネ施策を打ち出す企業のサポート役として、今後ますますエネマネ事業者の役割は重要度を増し、その責任も大きくなっていくことでしょう。
【参考】