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冷媒関連の法律と地球環境

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環境エネルギーネットワーク21  理事長 岸本 哲郎氏の基調講演「空調・冷凍業界に於ける次世代低GWP・ノンフロン冷媒動向」の内容解説の第3回目です。
最終回となる今回は「高圧ガス保安法の改正とフロン排出抑制法」「次世代冷媒の動向」「地球環境を守るために」について取り上げます。

 

基調講演 「空調・冷凍業界に於ける次世代低GWP・ノンフロン冷媒動向」 ダイジェスト

【第1回】 「冷凍空調と冷媒の歴史」「フロン対策の経緯」 

【第2回】 「次世代冷媒に要求される条件」「新たな指標(GTP)」

【第3回】 「高圧ガス保安法の改正とフロン排出抑制法」「次世代冷媒の動向」「地球環境を守るために」

 

 

 

「高圧ガス保安法の改正とフロン排出抑制法」(スライドNo.25~29)

 

フロンに関する課題と対策(スライド25)

経済産業省は、フロンに関する課題として「HFCの排出量の急増見込み」や「回収率の低迷」など5つを挙げています。これに対する対策として、現行法のフロン回収・破壊に加え、フロン製造から廃棄までのライフサイクル全体に渡る包括的な対策が必要とされています。

<具体策>

  1. フロン類の実質的フェーズダウン
  2. フロン類使用製品の低GWP・ノンフロン化促進
  3. 業務用冷凍空調機器使用時におけるフロン類の漏えい防止
  4. 登録業者による充塡、許可業者による再生

日本では、対策として2013年6月に「フロン排出抑制法」が公布されました。(2015年4月施行)

 

フロン排出抑制法の指定製品(スライド26)

「フロン排出抑制法」によって定められた指定製品に関して、フロン類使用製品の製造・輸入業者に課せられた、判断基準の一覧です。それぞれの目標年度までに、加重平均でGWPをいくつまで下げるかの目標値が示されています。例えば、家庭用エアコンの製造・輸入業者は、2018年度までに加重平均750GWPを目標としなければなりません。

 

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新冷媒の普及に向けた保安法の改正(スライド27)

新冷媒の普及に向け2016年11月に「高圧ガス保安法」が改正されました。本改正では、微燃性冷媒の3冷媒(R-32、R-1234yf、R-1234ze)が、新たに「特定不活性ガス」として区分され、日本冷凍空調工業会(JRAIA)により要求事項や施設ガイドラインが制定されました。

そして微燃性冷媒の3冷媒を使用する設備の規制が緩和され、微燃性冷媒を実際の設備で使用する際の基準が明確にされています。また、微燃性冷媒の3冷媒が「特定不活性ガス」に区分されたことにより、これまで「可燃性ガス」と考えなければならなかったものについて、改正後は不活性のフルオロカーボンと同じ扱いとなりました

 

高圧ガス保安法の法定能力の分類(スライド28)

高圧ガス保安法の法定能力の分類が表で示されています。第2グループ「不活性以外のフルオロカーボン」が特定不活性ガスと区分され、高圧ガス保安法の適用除外になり、申請届け出不要の範囲が明確になりました。

 
次世代冷媒(スライド29)

現在、次世代の冷媒の開発は混沌とした状況にあります。冷媒メーカー各社からはさまざまな提案がされており、今後は、用途や機能ごとに異なる冷媒が使われていくようになると考えられます。現在の状況では、HFO系の混合冷媒が有力と考えられます。また、今後、ますます微燃性冷媒を安全に使う技術が求められていくと考えられます。

 

「次世代冷媒の動向」(スライドNo. 30~32)

 

現在の用途別次世代冷媒候補(スライド30)

各用途における、次世代冷媒の候補がスライド30に示されています。このうち、業務用超低温冷凍機に使われている「R-23(HFC-23)」は現実的な代替冷媒がまだ出てきていません。

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代表的な次世代冷媒候補の提案例(スライド31)

代表的な次世代冷媒候補の提案例が表で示されています。この中でターボ冷凍機に使われている現状冷媒はR-123とR-134aです。トレインはすでにR-123に替わる次世代冷媒(R-1233zd、R-514A)を採用した新型ターボ冷凍機を発売しており、業界をリードしています。

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自然冷媒の可能性(スライド32)

「自然冷媒」と呼ばれている、NH3(アンモニア)、HC(プロパンやブタン)、空気、水、CO2(炭酸ガス)などを使用した冷媒の普及には、それぞれに実用上の課題があります。自然冷媒は使用を拡大すべきではあるものの、その課題から特別な用途の機器に限られてしまうというのが現状です。

 

地球環境を守るために(スライドNo. 33~43)

 

地球の温度のバランス(スライド33~35)

地球は「奇跡の惑星」といわれています。その理由の一つは「地球の温度バランス」です。それは、金星との比較から知ることができます。

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地球も金星も大気で覆われており、大気の中のCO2による温室効果によって地表温度が保たれています。この大気による温室効果を無視した場合、地球の地表温度は「-18℃」、金星の地表温度は「-50℃」です。しかし大気が存在する現実の地表温度は、地球は「15℃」である一方、金星は「460℃」となっています。これは金星の大気がほぼCO2だけであることが理由です。つまり、CO2による温室効果は、生物が生きていく上で必要なものであるものの、バランスが重要であるということです。

 

大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の変化(スライド36)

 

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この2つのグラフからは、大気中のCO2濃度の過去から未来にかけての変化が分かります。左側のグラフでは、2000年前からのCO2濃度に着目すると、17世紀頃まで280ppmであったCO2濃度が、産業革命を境に現在(21世紀)に向けて急激に上昇し、400ppmに迫ろうとしていることが分かります。右側のグラフでは、過去60万年間の大気CO2 濃度の変遷が示されています。

地球は「氷期-間氷期サイクル」による気温変動に応答して、大気中のCO2濃度も規則的な変動を繰り返してきました。しかし、産業革命を境にCO2濃度がこれまで経験したことのないレベルに上昇し、2100年にはこれまでの2~3倍にもなってしまうといわれています。

 

世界の平均気温の変化(スライド37)

近年の世界の平均気温の変化を見ると、やはり確実に気温が上昇していることが分かります。

 

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地球の歴史(スライド38)

地球の誕生から現代までの歴史を振り返ってみると、45億年前から現代まで、いわゆる「氷河期」は過去10回起きています。現代は「新生代氷河期」に当たります。その中で「間氷期」と「氷期」が繰り返されており、現在は「間氷期」であることが分かります。

 

温暖化が進むとどうなるか(スライド39)

温暖化が進むと、次のような自然災害、環境変化が予想されます。

  • 怖いメタンの大気放出…氷の下や海底等に閉じ込められていたメタンが地上に吹き出す
  • 一時的には局地的な寒冷化が起こる
  • 海水温が上昇し大形の台風やハリケーンが多発する
  • 海水の膨張や氷河の融解により海面が上昇
  • 北極等の氷が解けると海流循環が停止するおそれもある
  • 温暖化の暴走…温暖化はさらに加速し 最終的には気温は50℃以上になり、ほとんどの生物は絶滅する
  • 地球は現在氷河期のなかの間氷期にあり、近い内に氷期に突入するといわれているが、温暖化により氷期にならない可能性がある

 

海洋コンベアベルト(スライド40)

地球の海水には、「海洋コンベアベルト」と呼ばれる大循環システムがあります。地球環境はこれによって保たれていますが、極端な温暖化が進むとこのメカニズムが壊れるのではないかといわれています。

 

地球時計~地球誕生から現在までを1年とした場 (スライド41~42)

地球誕生から現在までを1年とした場合、人類が生まれたのは12月31日の23時を過ぎてから。生物の誕生、絶滅、恐竜の反映、絶滅を経て、私たち人類の歴史は地球の歴史からみると、大みそかの最後の30分程度であることが分かります。キリストの誕生は23時59分46秒、産業革命は23時59分58秒、明治維新は23時59分59秒です。このまま地球環境が破壊されていけば、次の年の1月1日は、環境が激変することより、人類が絶滅してしまう可能性があります。

 

おわりに

このように、地球の一生という尺度から見た人類の歴史は、非常に短いものです。このまま温暖化をはじめとした気候変動が進むと、人類の存続まで脅かされる可能性も十分考えられます。

地球温暖化防止のため、冷媒をはじめとする温暖化ガスの排出抑制は人類共通の課題です。これからも引き続き、開発側、使用側双方での取り組みが非常に重要です。このことをご理解いただき、日々の業務のご参考にしていただければ幸いです。

 

講演者プロフィール

特定非営利活動法人 環境エネルギーネットワーク21 理事長 岸本 哲郎 氏

1970年に東京三洋電機(1986年に三洋電機と合併)に入社。三洋電機環境システム事業部技術部長、環境システム事業部資材部長、環境システム事業部長を経て、2000年に三洋電機空調常務取締役に就任。2002年に日本冷凍空調工業会専務理事に就任。退任後、2014年8月、特定非営利活動法人 環境エネルギーネットワーク21を立上げ、環境・エネルギー問題を中心に情報の収集、発信を行う。また、早稲田大学客員上級研究員として省エネルギーシステム制御や次世代ヒートポンプ技術の研究に従事。

 

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全講演資料(2.4 MB)

 

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