地球温暖化に関連したニュースに頻繁に登場する「COP(コップ)」というワードや「京都議定書」「パリ協定」「モントリオール議定書」などの条約。それぞれの目的や内容を整理し、わかりやすく解説します。
1. COPとは
COPとは、締約国会議(Conference of the Parties)の略で、環境問題に限らず、多くの国際条約において、加盟国が物事を決定するための最高決定機関として位置付けられている会議です。COPの中でも頻繁にメディア等に取り上げられるものが、気候変動枠組条約(Framework Convention on Climate Change, FCCC)のCOP-FCCCです。COP-FCCCは1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国際環境開発会議(地球サミット、リオサミット)に向けて、地球温暖化対策を国際的に進めるために作られた、国を拘束する最初の国際的取り決め(条約)です。
COPには、他にも生物多様性条約(COP-CBD)、砂漠化対処条約(COP-CCD)などがあります。
2. 京都議定書とは
京都議定書は、1997年に開催された第3回締約国会議(COP3、京都会議)で採択された議定書です。1990年の温暖化ガスの排出量を基準に、2008~2012年の5年間の排出量の平均を〇%減らす、というかたちで先進国の数値目標が設定され、各国がその目標を達成することが義務付けられました。日本はこの5年間について1990年比6%削減という目標達成を約束しました。
そして2013年以降、2020年までの排出削減については、COP16で合意した政治的合意(カンクン合意・2010年)に基づいて各国が2020年目標を提出しましたが、そうした目標を積み上げても、国際社会が長期目標として合意した“気温上昇を工業化以前と比べて2℃未満に抑える”という「2℃目標」を達成できるほど排出削減できないこともわかってきました。
そのため2020年以降については、先進国も開発途上国もすべての国が一つの土俵で削減目標を約束するような国際条約の作成を目指して2012年から交渉が始まり、その結果、2015年のCOP21で合意されたのがパリ協定です。
3. パリ協定とは
(1)脱炭素化社会における「ゼロ・エミッション」を目指す長期目標を設定
パリ協定は、前述の通り2020年以降の地球温暖化対策にすべての国が参加するものです。特に重要なのは“工業化以前と比べて世界の平均気温の上昇が2℃を十分に下回る水準に抑制し、1.5℃以内に抑えるよう努力する”という長期目標を国際社会が決めたことにあります。パリ協定が目指すのは、今世紀後半に排出を実質ゼロ(ゼロ・エミッション)にする脱炭素化社会・経済です。
この目標は決して容易ではありませんが、温暖化の悪影響が今後いっそう深刻になり、対応能力に乏しい開発途上国や社会的弱者が最も影響を受けやすいことが研究によって明らかにされたことで、大幅な排出削減を国際社会が選択し達成を目指しています。
また、こうした長期目標は脱炭素化社会・経済の実現へと向けた変革の重要な担い手である事業者や市民に対しても、今後どういう社会を目指し、どのようなビジネスやライフスタイルが求められているのか、という方向性を示すものでもあります。
(2)5年ごとに各国が目標引き上げ
国際エネルギー機関(IEA)などは、“2℃目標”が現実的に達成できないと評価しています。このことから、パリ協定は各国が削減目標を5年ごとに見直して引き上げるしくみを決めました。
4. 京都議定書とパリ協定の違い
パリ協定においては、京都議定書に引き続き、先進国は国ごとの削減目標を約束することになっています。また開発途上国も時間とともにこうした先進国型の削減目標への移行が奨励されるなど、京都議定書の基本的な制度の多くはパリ協定にも盛り込まれています。しかし、京都議定書とパリ協定は似ているように見えて、実は大きく2つの違いがあります。
(1)削減目標を課す国の違い
第一の違いは、削減目標を課している国です。京都議定書が先進国のみに目標が課されていたのに対して、パリ協定ではすべての国が対象となり、目標提出の上、国内措置を実施することが義務付けられています。京都議定書における開発途上国が義務を負わない枠組みは、経済発展に伴う開発途上国の排出量の増加という現実の変化にそぐわなくなってきたことから、パリ協定ではより実効性の高い枠組みとなることが期待され、すべての国が対象になっています。
(2)削減目標「達成」の義務付けの有無
第二の違いは、削減目標の「達成」を義務付けているかどうかです。京都議定書では目標の達成を先進国に義務付けていましたが、パリ協定は義務付けていません。しかしパリ協定において目標提出は義務であり、誠実に国内措置を実施しなければ義務に違反しているとみなされる可能性はあるといわれています。
5.モントリオール議定書
モントリオール議定書は、環境を保護、改善するための条約です。目的は京都議定書やパリ協定と同じといえますが、環境の中でも「オゾン層保護」に的を絞っている点に特徴があります。
採択された背景には、冷蔵庫の冷媒・電子部品の洗浄剤等として使用されていたCFC(クロロフルオロカーボン)や消火剤のハロン等によるオゾン層の破壊に伴い、地上に達する有害な紫外線の量が増加し、(1)人体への被害(例:視覚障害や皮膚癌の発生率の増加等)、(2)自然生態系に対する悪影響(例:穀物の収穫の減少、プランクトンの減少による魚介類の減少等)がもたらされていることがあります。
このようなオゾン層破壊のメカニズム及びその悪影響は1970年代中頃から指摘されはじめ、その後国際的な議論が行われ、次の条約や議定書が採択されています。
1985年3月22日 「オゾン層の保護のためのウィーン条約」
オゾン層の保護を目的とする国際協力のための基本的枠組が設定された条約。
1987年9月16日 「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」
ウィーン条約の下、オゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、当該物質の生産、消費及び貿易を規制して人の健康及び環境を保護するための議定書。
そして2016年10月の「キガリ改正」は、このモントリオール議定書の第28回締約国会議(MOP28)における改正です。キガリ改正では、かつてオゾン層保護対策として導入が進められてきたハイドロフルオロカーボン(HFC)が、その温室効果(GWP)の大きさから新たに規制対象となりました。