冷凍空調と冷媒の歴史/フロン対策の経緯

2017年4月19日(水)東京、21日(金)大阪にて、招待者様を対象に「ノンフロン次世代冷媒R-514A採用 新型ターボ冷凍機製品発表会」を開催しました。その基調講演として、環境エネルギーネットワーク21 理事長 岸本 哲郎 氏に「空調・冷凍業界に於ける次世代低GWP・ノンフロン冷媒動向」をご講演いただきました。

冷媒の誕生から次世代冷媒の動向まで、興味深い内容であり、特に冷媒に関わる環境対策をご検討されている方にとって、非常に役立つ情報と思われます。

そこで、この講演内容を、今月から3回に分けて解説いたします。

 

基調講演 「空調・冷凍業界に於ける次世代低GWP・ノンフロン冷媒動向」 ダイジェスト

【第1回】 「冷凍空調と冷媒の歴史」「フロン対策の経緯」 

【第2回】 「次世代冷媒に要求される条件」「新たな指標(GTP)」

【第3回】 「高圧ガス保安法の改正とフロン排出抑制法」「次世代冷媒の動向」「地球環境を守るために」

 

講演者プロフィール

特定非営利活動法人 環境エネルギーネットワーク21 理事長 岸本 哲郎 氏

1970年に東京三洋電機(1986年に三洋電機と合併)に入社。三洋電機環境システム事業部技術部長、環境システム事業部資材部長、環境システム事業部長を経て、2000年に三洋電機空調常務取締役に就任。2002年に日本冷凍空調工業会専務理事に就任。退任後、2014年8月、特定非営利活動法人 環境エネルギーネットワーク21を立上げ、環境・エネルギー問題を中心に情報の収集、発信を行う。また、早稲田大学客員上級研究員として省エネルギーシステム制御や次世代ヒートポンプ技術の研究に従事。

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冷凍・空調と冷媒の歴史(スライドNo.3~5)

 

1824年 カルノー冷凍理論(仏)

最初の冷凍サイクルの理論は、フランスの軍人であったサディ・カルノーによって1824年に提唱された、理想的な熱サイクル「カルノーサイクル」でした。

1930年 フロンガス開発(米)

当時、フロンは「奇跡の発明」ともいわれました。

(補足:1938年、トレインは世界発の密閉ターボ冷凍機「Turbovac™」開発。ギア増速なし密閉ターボ冷凍機の1号機です。その後、冷凍・空調の総合メーカーとして事業を拡大しました。)

1941年頃 日本でのフロンの本格製造が開始

1985年のオゾン層保護に関するウィーン条約、1987年のモントリオール議定書、1997年のCOP3 京都議定書、2015年施行のフロン排出抑制法、2016年のCOP28モントリオール議定書キガリ合意など、近年、主要な条約や議定書が採択、合意されています。

フロン対策の経緯(スライドNo.6~12)

 

これまでのフロン対策の経緯

これまでのフロン対策は、大きく分けて「オゾン層保護」と「地球温暖化防止」の二つに分けられます。2020年に向けて、さらなる温室効果ガス排出量の増加が見込まれていることからも、新たな対策が必要とされています。

モントリオール議定書と京都議定書における対象物質ガスの比較

モントリオール議定書は、オゾン層破壊物質生産量・消費量を規制する議定書であり、京都議定書は、温室効果ガス排出量の削減を目的とした議定書であるという違いがあります。

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HFC排出量の推移

下記は用途別のHFC排出量のグラフです。キガリ合意で温室効果ガスとして段階的削減が決まった「HFC冷媒」の排出量は、年々増えています。ほとんどが冷媒用途ですが、製造時の漏えいは、現在では非常に少なくなっています。

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出典:日本国温室効果ガスインベントリ報告書 2014年4月

フロン類使用製品が最終的に目指すべきGWP値について

産業構造審議会 製造産業分科会化学物質政策小委員会 フロン類対策WGが、2014年6月にまとめたものによると、現在使用されているHFC冷媒は、GWP値の低いHFO冷媒、HFO系混合剤や自然冷媒などに転換されていくといいます。

GWP値は、将来的に100未満に抑える必要がありますが、他方「GWP100未満」の範囲でも省エネ性向上、安全性向上につながる開発に余地を残す(*)こと、噴射剤としてフロン類を使用するダストブロワーは、フロン類をそのまま大気中に放出するため「GWP=10以下」を基準とすることを妥当としています。

(*) 岸本氏解説 

あくまでGWPを限りなく低くすることが目指されていますが、GWPが非常に低い値でなくても100未満であれば、省エネ性や安全性などの物性が既存の冷媒よりさらに向上する可能性がある冷媒は、開発が進められるべきであると考えられています。

フロン類使用見通しについて

経済産業省は、今後のフロン類使用見通し(スライドに示されている条件のもとに算出)について、2020年度は、BAU(*)出荷相当量より40%減、2025年には同50%減と暫定で推計しています。

*BAU: Business As Usual 。現状対策維持した場合の推計値。

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2015年の国連気候変動枠組条約締結国会議 COP21パリ協定の合意では、最終的に温暖化ガス排出量を実質的にゼロ にすることを目標とされ、2016年のCOP28におけるキガリ合意ではHFC生産・消費量の削減が予定されています。

 

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