「環境と新冷媒 国際シンポジウム」(神戸シンポジウム)が、2018年12月6日(木)・7日(金)に開催されました。神戸シンポジウムは、日本冷凍空調工業会の主催で1994年から隔年で開催されており、政府、団体、研究機関、大学、企業等による、環境と冷媒に関する最新情報の発表の場として、国際的にも注目度の高いシンポジウムです。今回で第13回目となる神戸シンポジウムへの参加レポートをお伝えいたします。
プログラム概要
1日目
1) 基調講演
主催者の日本冷凍空調工業会により、神戸シンポジウムの歴史、製品セグメント毎の新冷媒への転換状況、グローバルの冷媒関連規制動向等や今後の課題について講演が行われました。
2) 環境
フロン対策の現状・課題や、微燃性、可燃性冷媒に関する研究成果などが発表されました。
また、日本では、モントリオール議定書キガリ改正(2016年10月)に基づき、オゾン層保護法の改正による、HFC冷媒の消費量の減少フォーキャスト(2024年までにベースラインの10%減少、2029年までに40%減少、2034年までに70%減少)が発表されました。このフォーキャストを達成するために、代替となる低GWP冷媒の開発促進や、可燃性冷媒などのリスクアセスメントの重要性等が共有されました。
3) 新冷媒
低GWP冷媒を用いた最新機器開発状況が発表されました。主に低GWP冷媒を用いたVRF(ビルマルチエアコン)やチラーの開発状況等の発表が行われました。
4) 冷媒の安全性・リスクアセスメント
将来的に実際の使用が想定されるA2L、A3冷媒等の可燃性冷媒を中心に、その安全性及びリスクアセスメントに重点を置いた様々な研究結果が発表されました。
2日目
1) 圧縮機/潤滑油
冷凍機の心臓部ともいえる圧縮機の開発状況、最新技術や、HFO系冷媒、混合冷媒向け潤滑油に関する最新情報が発表されました。
2) 省エネルギー
CO2冷媒を利用した排熱利用冷凍機や、未利用エネルギーを利用した高温ヒートポンプ、また、EV/PHEV用高効率ヒートポンプシステムの開発状況や、冷媒メーカーから最新冷媒の省エネ特性等が発表されました。
3) 新冷媒
R-410A、R-404Aの代替冷媒としてのR-466Aを含め、次世代冷媒の様々な物性や特性、新冷媒の開発状況等が発表されました。
所感(弊社参加者)
各セグメントにおいて低GWPの次世代冷媒への転換が急務とされていますが、ビルマルや空冷チラー等で大量に使用されているR-404A、R-410Aの代替冷媒はこれまで全てがA2L(微燃性)冷媒でした。今回新しくGWP:500を切ったR-466Aが発表されたことは大きなニュースであり、同セグメントにおける冷媒転換に拍車がかかるのではないかと感じられました。
また、一部の低温冷凍設備において、低GWP次世代冷媒がまだ市場にないことから、これまで強撚であることから使用が避けられてきたR-290(プロパン)の使用を前提としたリスク評価が始められていることは、地球温暖化防止に向けた産業界の努力の真剣さを改めて感じました。
【参考】
- 日本冷凍空調工業会 環境と新冷媒 国際シンポジウム2018 基調講演データ
- The International Symposium on New Refrigerants and Environmental Technology 2018 “Proceedings” (参考資料)