吸収式冷凍機とは ~構造原理と仕組み~ ターボ冷凍機と比較

吸収式冷凍機(Absorption chiller)は「水」を冷媒として用い、吸収式冷凍サイクルを利用して冷水や温水を作る機器です。自然界にある「水」を利用しているため、ナチュラルチラーとも呼ばれています。

吸収式冷凍機の構造や仕組みについて、同じ用途で使用されることの多いターボ冷凍機と比較しながら解説します。

冷凍機の種類

冷凍機には様々なサイズや種類がありますが、冷媒と冷凍サイクルの原理によって分類されます。代表的な冷凍機の種類としては、蒸気圧縮式冷凍機と吸収式冷凍機があります。

蒸気圧縮式冷凍機は、圧縮機で冷媒ガスの圧力・温度を上げることで冷却効果を生む「蒸気圧縮式冷凍サイクル(蒸発→圧縮→凝縮→膨張)」を採用しています。圧縮機は冷凍機の構成要素の中でも重要な機械であり、この種類によって、レシプロ冷凍機、スクロール冷凍機、スクリュー冷凍機、ターボ(遠心式)冷凍機などにさらに分類されます。主に「フロン類」を冷媒として使用します。

一方、吸収式冷凍機は「吸収式冷凍サイクル(蒸発→吸収→再生→凝縮)」を採用し、電気を動力とする圧縮機は使用しません。蒸発器内の圧力をほぼ真空状態にし、冷媒を約7~10℃で沸騰する原理を採用しています。「水」を冷媒として使用します。

蒸気圧縮式冷凍サイクル

一般的にターボ冷凍機などで採用されている冷凍サイクルです。

蒸気圧縮式冷凍サイクル
 

蒸気圧縮式冷凍サイクルでは、まず低温・低圧の気液混合冷媒(液冷媒と冷媒ガス)が蒸発器に入ります①。

蒸発器内で冷水から熱を奪い蒸発し、気体となった冷媒ガスは圧縮機内へ吸い込まれ②、圧縮されて高温・高圧の冷媒ガスとなり、凝縮器に吐出されます③。

高温・高圧の冷媒ガスは凝縮器チューブに通水される冷却水に放熱し、低温・高圧の液冷媒になります④。

凝縮された液冷媒は膨張装置を経て減圧され①、蒸発器に流れるというサイクルを繰り返します。

吸収式冷凍サイクル

一方、吸収式冷凍サイクルは、蒸気圧縮式冷凍サイクルと根本的な二つの違いがあります。1つ目は、圧縮機ではなく、吸収器・ポンプ・再生器が使われていること。そして、冷媒の他に吸収液が必要なことです。

吸収式冷凍サイクル
 

まず、低温・低圧の気液混合冷媒(水と水蒸気)が蒸発器に入ります①。

蒸発器内はほぼ真空状態のため、通常は100℃の水の沸点が7~10℃まで下がっており、冷水配管内の比較的温かい水から熱を奪うことで冷媒(水)は沸騰し水蒸気になります。蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧縮機の吸込み側のように、水蒸気が吸収器に吸い込まれます②。

水蒸気は吸収液「臭化リチウム」に吸収され、再生器へとポンプで押し出されます。再生器内で冷媒・吸収液の混合液を加熱し元の水蒸気と吸収液に分離させ、吸収液は吸収器へ戻り、水蒸気は凝縮器へ送られます③。

凝縮器内で熱を奪われ水に戻った冷媒は④、膨張装置で減圧され①、蒸発器に流れるというサイクルを繰り返します。

再生器で熱を加える方法として、ガス・油などの燃料を用いた燃焼方式か、蒸気や高温水による方法があります。

吸収式冷凍機
 

吸収液:臭化リチウムとは

化学式 LiBr で表される、リチウムの臭化物です。臭化リチウム自体は「無毒の塩」であり、水に対して高い親和性を持っています。水に溶けている場合「臭化リチウムの沸点」は「水の沸点」よりもかなり高いため、再生器で簡単に分離することができます。

吸収式冷凍機のメリット

冷媒として水(蒸留水)を使用しているため、冷媒にかかるコストが低く、環境に優しいというメリットがあります。

次に一般的にターボ冷凍機が冷水専用なのに対し、吸収式冷凍機は冷水・温水の取り出しをすることができます。つまり一台で冷房・暖房をすることが可能です。

また、他のシステムからの排熱や自然エネルギーを再生器の加熱に利用することができます。一般的に大きな電力を使用しませんので、ビルの電力デマンドが低減できます。

吸収式冷凍機のデメリット

冷媒には「水」を使いますが、冷媒とは別に「臭化リチウム」と呼ばれる吸収液を使用します。臭化リチウムは腐食性があり、例えば10年間吸収式冷凍機を使用した場合、効率は約10%落ちると言われています。また、吸収液には有害な防食材(添加剤)が含有しており、専門業者の回収が必要となります。

また、蒸発器内の圧力をほぼ真空状態にして水が7~10℃で沸騰する原理を利用しており、その冷凍サイクルは全て化学反応で行っているため、ターボ冷凍機と比較すると遅く、エネルギー効率も劣ります。

まとめ

「吸収式冷凍機とターボ冷凍機、結局どっちがいいの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

冷凍機単体の効率ではターボ冷凍機の方が高いです。

しかし設備の改修などの場合は特に、その他の既存設備の状態や、燃料や電力の価格などを踏まえた上で、最適な組み合わせは何か、検討・選択されることをおすすめします。

吸収式冷凍機とターボ冷凍機の比較