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米国森林局の消防施設を完全オフグリッド化。初期投資ゼロで約5.8億円の削減を達成

(※1ドル=153円換算)

earth day concept, tropical forest and natural resource

課題

山火事の脅威と、遠隔地ファシリティが抱える電力のジレンマ

きれいな空気や豊かな真水、レクリエーション活動の場から野生動物の生息地に至るまで、米国の森林や草地がもたらす恩恵はすべての人に及んでいます。

米国農務省(USDA)の管轄機関である米国森林局(USFS)は、全米154の国立森林公園と20の国立草地に広がる、1億9,300万エーカー(約7,800万ヘクタール)もの広大な土地を管理しています。しかし現在、これらの貴重な森林や草地は、激甚化する山火事によって大きな危機に瀕しています。カリフォルニア州の発表によると、2020年だけでも州内の420万エーカー以上の土地が山火事によって消失し、1万500棟近くの建物が損壊または全壊するという甚大な被害が出ました。

こうした最前線で活動する消防体制を強化するため、米国森林局はカリフォルニア州内5箇所の国立森林公園にある5つの消防施設を対象に、太陽光エネルギーの導入および照明のアップグレードプロジェクトを立ち上げました。

 

 

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24時間年中無休で稼働する「老朽化発電機」の限界

対象施設の選定にあたっては、トレインが実施した「投資グレード監査(Investment Grade Audit)」の一環であるライフサイクルコスト(LCC)評価が基準となりました。というのも、これらの施設はすべて遠隔地に位置しており、商用電力網が届かない「オフグリッド環境」にあったからです。これまでは、トラックで配送されるプロパンガスやディーゼル燃料だけを頼りに発電機を動かし、施設内の全電力や設備を賄っていました。

しかし、シーズン中の運用期間に入ると、多くの施設で「老朽化」し、往々にして「過大容量(オーバースペック)」な発電機を24時間年中無休で常時稼働させなければならず、これが以下のような山積する課題を生んでいました。

  • コストの膨大化:
    化石燃料そのものの価格高騰に加え、遠隔地への頻繁な配送コスト、さらに老朽化に伴うメンテナンス・整備費用が大きな負担となっていました。
  • 任務継続へのリスク:
    万が一の予備電源(冗長性)がないケースもあり、突発的な発電機の故障は、一分一秒を争う消防ステーションとしての任務継続を脅かす深刻なリスクでした。
  • 環境への負荷:
    24時間体制での化石燃料の燃焼は、温室効果ガス(GHG)排出量を増加させ、環境保護を掲げる組織の方針にも逆行していました。

 

 

ソリューション

米国森林局(USFS)が歩んできた100年以上の歴史において、自然資源の管理目標を達成するためには、絶え間ない業務改善と進歩が不可欠な要素であり続けました。

そして今日、変化に対して迅速かつ柔軟に対応する「アジャイルな実践」と、現代における最高の科学技術を組み合わせることで、全国の国立森林公園や草地が抱える課題を解決し、持続可能な目標を達成するための新たな道が切り拓かれようとしています。

 

 

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太陽光システムのポテンシャルを最大限に引き出す

商用電力が届かない極めて遠隔地であっても、太陽光エネルギーを「創出」「貯蔵」「供給」できる革新的な自立型システムを構築する――。この卓越した実績と技術力こそが、今回のパシフィックサウスウェスト地区(第5管区)プロジェクトにおいて、トレインが選定された大きな決め手となりました。

このプロジェクトは、米国森林局(USFS)とトレインとのパートナーシップに、エネルギーマネジメントという「新たな次元」をもたらすことになりました。

実は両者の連携は今回が初めてではありません。以前にもトレインは、カリフォルニア州プラサービルにある森林局の種苗園(シード・ナーサリー)プロジェクトにおいて、チラー(冷水機)やボイラー、および制御システムの導入を手掛けた実績があります。この施設は、山火事の後に森林を再生させるための苗木を育てる、北カリフォルニアで唯一の重要な種苗園です。

遠隔地における太陽光発電の生成・蓄電・供給システムの構築において、トレインの高度な技術力と豊富な実績が評価されました。

本プロジェクトは、以下の5施設で実施されました。

  • クリーブランド国立森林公園:パイン・ヒルズ消防署
  • ロス・パドレス国立森林公園:パシフィック・バレー管理官詰所
  • メンドシーノ国立森林公園:ソーダ・クリーク消防署
  • プルーマス国立森林公園:フレンチマン消防署・ワークセンター
  • セコイア国立森林公園:ブラックロック消防署・ワークセンター

2018年5月から2019年11月にかけて実施されたこのプロジェクトは、米国森林局(USFS)のプロジェクトとして初めて、米国エネルギー省による連邦施設省エネ技術支援(DOE AFFECT)補助金を受けました。

また、パシフィックサウスウェスト地区(第5管区)にとっては2件目となる「ESPC ENABLE(省エネルギーパフォーマンス契約)」プロジェクトであり、トレインにとっても、米国一般調達局(GSA)の調達スキームを活用した初の「ESPC ENABLE」プロジェクトという、官民双方にとって記念碑的な取り組みとなりました。

 

総勢50名超の合同チームと外部機関による官民連携モデル

プロジェクトの開始から完了まで、カリフォルニア州全域の米国森林局(USFS)とトレインからなる50名以上の合同チームが緊密に連携。消防署や隊員宿舎など、計31棟(総床面積 約3,000㎡)に及ぶ大規模なファシリティ改修を成し遂げました。

本プロジェクトの成功には、外部機関による強力なバックアップも貢献しています。米国エネルギー省(DOE)による予算編成・現地監査の支援と、米国国立再生可能エネルギー研究所(NREL)によるシステム性能や蓄電池技術の検証により、高い技術的信頼性が担保されました。

 

画一的モデルからの脱却:過酷な環境に挑むカスタム設計

本プロジェクト(複数拠点へのオフグリッド型可搬型太陽光発電、バックアップ蓄電池、LED照明の導入)は、米国森林局(USFS)とトレインにとって初の試みであり、この規模での成功事例は他社を含めても世界初となる画期的な挑戦でした。

トレインは部門を超えた連携により、日々の消防業務を一切止めることなく、各拠点の固有ニーズに合わせたカスタムシステムを構築。設計と施工においては、以下の過酷な条件への対応が最優先されました。

  • 優れた環境耐性(レジリエンス): 海抜ゼロから標高約2,700m(9,000フィート)に位置する拠点に対応するため、猛暑や豪雪、強風、豪雨に耐える設計を採用。
  • 高い可搬性: トレーラーで搬送して現地で組み立てられる仕様とし、万が一山火事が施設に迫った際には、迅速に解体・撤去できる構造を確立。
  • 工場プレハブ化によるコスト削減: 現地での施工コストと工期を圧縮するため、工場で事前に組み立てと動作テストを完了させた「アセンブリ対応機器」を搬入。

また、各施設では並行して照明のアップグレードも実施。エネルギー効率の悪かった既存の蛍光灯や白熱電球をすべて高効率LED照明へと刷新し、施設全体の省エネ性をさらに高めています。

 

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「パフォーマンス」を最優先したシステム構成と運用の仕組み

遠隔地での確実な機能性、優れたエネルギー効率とコスト効率、そして高い可搬性(モビリティ)――。これらの強みを併せ持つ「オフグリッド型可搬型太陽光発電システム」こそが、今回の施設群にとって最適なソリューションでした。

従来の「発電機を24時間年中無休で回し続ける運用」から脱却し、新たなシステムでは日中の電力需要が低い時間帯に太陽光パネルが創り出した電力を蓄電池へ貯蔵します。そして、夜間など発電が行われない時間帯にこの電力を放電して施設全体の機能を維持します。この自立型システムは、商用電力網(グリッド)への接続が制限されている、あるいは接続すら不可能な遠隔地に最適な設計となっています。

綿密な研究、計画、そしてチームワークの結集により、プロジェクトを成功へと導いたコアシステムの構成スペック(5施設合計)は以下の通りです。

  • 太陽光パネル(PV): 計115.6 kW(335Wパネル × 345枚)
  • 蓄電池(バッテリー): 計830 kWh(鉛蓄電池 590 kWh、リチウムイオン電池 240 kWh)
  • チャージコントローラー: 26台
  • インバータ: 11台

なお、各施設には既存のプロパンまたはディーゼル発電機が「バックアップ用」として配備されています。プロジェクト完了以降、システムは順調に安定稼働を続けており、現在の発電機の役割は「月例の動作テスト」や「長期間の不順天候時にバッテリーを補電する」といった限定的な運用にとどまっています。

 

成果

官民連携がもたらした驚異的なリザルトと次世代のスタンダード

独自の技術やアプローチ、リソースを持つ官公庁と民間企業がパートナーシップ(PPP)を組むことで、傑出した成果が生まれます。今回の「太陽光発電+蓄電池システム」および「LED照明」への刷新プロジェクトも、まさにその好例となりました。

米国森林局(USFS)が本来の任務をより効率的かつ効果的に遂行できるようにしただけでなく、未来の世代に向けて豊かな環境を守ることにも貢献。本プロジェクトは、米国における「持続可能なファシリティマネジメント(設備管理)」の新たなベンチマークを確立しました。具体的な成果は以下の通りです。

1. 運用面(オペレーショナル)の成果

  • レジリエンスの向上: 電源システムの機能性、信頼性、および冗長性が大幅に向上。
  • 安全性の確保: 燃料の取り扱い減少などに伴い、労働安全衛生上のリスクが低減。
  • エネルギー自立: 外部の燃料供給網に依存しない自立型電源を確立。
  • 労働環境の改善: 発電機の常時稼働が停止したことで周囲の騒音が激減し、快適性が向上。

2. 環境面(エンバイロメンタル)の成果

  • GHG排出量をほぼゼロに削減: 化石燃料の使用を最小限に抑え、カーボンフットプリントを劇的に縮小。
  • 流出リスクの低減: 燃料輸送の回数が減ったことで、輸送に伴う燃料流出などの環境リスクが低下。

3. 財務・戦略面(ファイナンシャル)の成果

  • 総額約380万ドルのコスト削減: 14年間の契約期間全体を通じ、日本円で約5.7億円規模の削減額が保証。高効率な「ESPC ENABLE」スキームとDOE AFFECT補助金の適用により、本来22年かかる単純投資回収期間を大幅に短縮しました。
    • 劇的な省エネ: 年間予測省エネ量は3,023 MMBtu(英国熱量単位ベース)。
    • 施設全体のエネルギー消費の約82%を再生可能エネルギーへと転換。
    • 保守費用の削減: 気象条件等にもよりますが、各拠点の発電機用燃料およびメンテナンス・将来の更新費用を最低でも70%以上削減。
  • データ管理の高度化: 遠隔監視・分析システムの導入により、エネルギーマネジメントが容易に。

4. その他の付加価値
本プロジェクトは、米国森林局のリーダー層や現場スタッフに対し、「民間資金(サードパーティ・ファイナンス)を活用したエネルギープロジェクト」や「持続可能なファシリティソリューション」への認知度を高める契機となりました。また、バイ・アメリカン法(米国製品購入法)に準拠し、契約電力量の実に98.6%を米国企業へと支払うことで、国内のビジネスや製造業の活性化も強力に後押ししています。

 

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