熱回収システム導入で顕著な効果を実現
55 Water Streetの電化改修と熱回収システム導入により、NYCローカル法97の遵守、エネルギー節約などを実現
ハイライト:
- この規模(3.8百万平方フィート)のNYCの建物で、この技術を使用した初めての電化改修。
- ニューヨーク市における電化と脱炭素化のモデルとして認識される。
- インセンティブや税制優遇措置を確実に受けるために、12か月以内に完了。
- 遵守、脱炭素化、レジリエンスに対する統合的なアプローチ。
- 変化するテナントの要求に適応する柔軟性の向上。
複数のシステムが冗長性を提供し、ダウンタイムのリスクを軽減
課題
Water Streetは、総床面積約35万平方メートル(380万平方フィート)、独自の郵便番号を持ち、86基のエレベーターを備えたNYC最大、全米でも2番目に大きい民間所有のオフィスビルです。1993年にアラバマ州退職者年金基金(RSA)が約2億200万ドルで購入し、現在はNew Water Street Corporationの管理のもと、価値は15億ドル超にまで高まっています。
S&PグローバルやNYC交通局など著名なテナントを多数擁するため、New Water Street Corporationはテナントの要望を最優先にしてきました。これには継続的な設備投資が含まれますが、必ずしも容易なことではありません。NYCのほとんどの商業ビルは、性能が低く光熱費が高騰しがちな蒸気システムを暖房に利用しており、ここにも老朽化したインフラやNYCローカル法97(LL97)の対応という新たな課題が加わり、管理会社には大きなプレッシャーがかかっていました。テナントの業務に支障を与えず、これらの課題を一挙に解決できる包括的なソリューションが求められていました。
ソリューション
トレインは、55 Water Streetと10年以上にわたって協力し、さまざまなインフラおよびエネルギー効率向上のプロジェクトを支えてきました。長年にわたるこの関係性のおかげで、ビル内の設備や運用に対する深い理解が築かれており、それが今回の最大規模プロジェクトの準備において重要となりました。
「トレインには強い信頼があります。これほど大きな規模のプロジェクトを1年で、テナントに一切影響を与えず完了できるのは大きな決断でしたが、彼らなら必ずやり遂げてくれると確信していました。」(Dan Palino, 55 Water Street 最高執行責任者)
この信頼関係を基盤として、トレインは経験豊富なチーム—設計コンサルタントのJB&B、オーナー代表のFischer Energy—と協力。高性能かつ信頼性に優れ、効率的な包括的ソリューションの設計・導入を実現しました。
完全電化システム
本プロジェクトでは、従来のHVAC機器の全面交換を実施しました。新たに遠心式チラー2台とモジュール式チラー27台、さらに水熱源ヒートポンプを核とした熱回収システムを導入しています。この冷却システムのアップグレードでは蓄熱技術を活用し、従来は冷却過程で捨てられていた熱エネルギーを回収して再利用しています。
この新しいシステム構成により、様々な負荷条件に対応できる暖房・冷房の柔軟性が向上し、複数のシステムに能力を分散させることで冗長性も高まりました。これによって、少数の大型機器だけに依存する形から脱却し、信頼性と運用効率を大きく高めています。
テナント第一主義の徹底
今回のプロジェクト期間中も建物は常に満室状態で稼働していました。そのため、テナントの快適性とビジネスの継続性を維持することが最優先事項となりました。工事の約3分の2は夜間に実施され、影響を最小限に抑えています。また、機械室が14階に位置していたため、各工程において緻密な計画と継続的な工程調整が不可欠でした。
「トレインはプロジェクトの初期段階から様々な工程を事前に綿密に調整したことで、稼働中で日々状況が変化する55 Water Streetのような施設でも、物流まできちんと考慮した実行計画を早い段階で立てることができました。そのおかげで、施工中の遅延や他工程との衝突を防ぐことができ、最終的に一年以内でプロジェクトを完了することができました。設計がまだ100%終わっていない段階から解体作業に着手したことを思えば、これは決して容易なことではありません。」 (Scott Lewin, トレイン北米エネルギーサービス事業運営リーダー)
建物の性能を維持するために
トレインは建物のエンジニアチームに実践的なトレーニングを提供しました。スタッフはシステムを自信を持って管理できるようになり、初日から継続的で信頼性の高い運用をサポートしました。
結果
当初、55 Water Streetの設備改修は、NYCローカル法97の罰則回避と運用コストの削減に重点が置かれていました。常時満室の状況と厳格な工期の中で、プロジェクトの成否は非常に重要なものとなっていました。結果的に、プロジェクトチームは困難を乗り越え、設備の電化改修によってビルのパフォーマンス向上、柔軟性拡大、そして長期的なレジリエンスと規制対応力の強化を実現しました。
「トレインはこのプロジェクトを1年以内に完了させてくれました。補助金の都合もあり、絶対に守らなければならない期限でしたが、見事にやり遂げてくれました。本当に感心しました。」(Palino氏)
タイムライン通りにプロジェクトを完了させたことで、55 Water StreetはNYCローカル法97による年間120万ドルの罰金を回避しただけでなく、約550万ドルのユーティリティリベートと900万ドルのインフレ抑制法(IRA)による税額控除も得ることができました。
さらに、個別事情に合わせたソリューションの導入により、蒸気使用量を約70%削減し、全体のエネルギー強度も約20%低減。これによって、CO₂排出量の大幅削減や、テナント要望に柔軟に対応できるシステムを実現しています。
現在、ニューヨーク市内の多くのビルオーナーが、55 Water Streetを電化・脱炭素化の模範として注目しており、複雑で困難な状況下でも高い目標は達成可能であることを証明しています。
1. https://www.55water.com/ownership/
2. https://be-exchange.org/case_study/steam-innovations-for-new-york-city-buildings/
3. https://www.nyc.gov/site/buildings/codes/ll97-greenhouse-gas-emissions-reductions.page
トレインが提供するサービス
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