液浸冷却は導入すべきか?AI時代のデータセンター冷却方式を比較
AI がもたらす爆発的需要と冷却課題
生成 AI の急成長により、データセンターの処理能力への需要はほぼ飽和状態まで高まっています。
AI ワークロードを処理するための高性能な CPU/GPU は大量の熱を発生させ、加えてラック密度の上昇が、これまで以上の冷却性能を求める状況を生み出しています。
ただし、それはすべてのデータセンターに当てはまるわけではありません。
ハイパースケール DC ではラック密度が大きく伸びると予測される一方で、中小規模のエンタープライズやコロケーション DC では、今後数年間は 12~17.5kW 程度の密度で推移すると見られています1。これは、多くの施設がしばらくの間、従来のチラーによる空冷方式を使い続けられることを意味します。
各方式には、それぞれ利点と課題があります。
空冷システムの特徴
空冷方式のメリットは以下の通りです。
- コスト効率が高く、仕組みがシンプルで信頼性が高い
- 冷気をサーバー全体に送り込み、機器周辺の熱を逃がす仕組み
空冷には大きく3つの方式があります。
- Room(室内全体冷却):
空調システムで部屋全体、または床下の通風口から冷気を供給。
- Row(列単位の冷却):
列ごとに専用の冷却ユニットを設置。室内全体を冷やすより効率的。
- Rack(ラック単位の冷却):
特定ラックに専用ユニットで冷気を集中供給。より精密な冷却が可能。
また、チラーを増設したり、より高性能な機種に更新することで冷却能力を強化できる点も空冷の利点です。
一方で、空冷には次のような課題もあります。
- データ需要の急増
- エネルギーコストの高騰
- 大型冷却塔のある施設では水使用量の問題
- 水料金の上昇
- 将来的な水不足リスク
AI による電力需要の増加に加え、電気代や水代の上昇は、空冷方式にとって大きな懸念材料となります。
液浸冷却システムの特徴
液浸冷却(液冷)は、部屋単位ではなく、サーバーそのものを直接冷却する方式です。主な方法は次の通りです。
Direct-to-Chip(シングルフェーズ):
冷却液を CPU/GPU に直接届け、冷却プレートで熱を奪う方式。電子部品は液体に触れず、ファンが温められた空気を排出します。
リアドア式熱交換器:
サーバー背面に熱交換ユニットを取り付け、内部ファンで熱を吹き出して冷却。既存機器を大きく改造せずに導入でき、比較的低コスト。
浸漬冷却(イマージョン冷却):
全体を絶縁性液体に沈める方式。
熱吸収効率が高く、省エネ・静音・省スペースを実現。
液冷は強力で効率的な反面、次のような課題もあります。
- 専用設備(タンク、ポンプ、熱交換器など)が必要で 初期費用が高い
- 漏れのリスクによる機器損傷
- 液の定期交換などメンテナンスが必要
- 機器によっては液冷に非対応
- 設計・施行・運用が複雑
- 空冷HVACの経験しかないスタッフには習熟が必要
結局どうすべき? 空冷・液冷・ハイブリッド
空冷を続けるのか、液冷へ移行するのか、あるいはハイブリッドを採用するのか?
どの選択が最適かは、施設の現状と将来計画によって異なります。
トレインは、どのアプローチを選ぶ場合でも、最適なデータセンター冷却システムの企画・設計・運用を総合的に支援します。
1 JLL Research, 2024 - https://www.jll.com.co/en/trends-and-insights/research/data-center-outlook (Accessed April 2024)