エアコンやターボ冷凍機などの空調機器は、冷凍サイクルと呼ばれる4つの工程を繰り返すことで、冷たい水や空気を作り出しています。
各行程時の冷媒の状態を1枚の線図で描くことにより、各部の状態や数値を知り、冷凍機の設計や運転状況の判断に応用することができるp-h線図(ピー エイチ センズ)について解説します。
エアコンやターボ冷凍機などの空調機器は、冷凍サイクルと呼ばれる4つの工程を繰り返すことで、冷たい水や空気を作り出しています。
各行程時の冷媒の状態を1枚の線図で描くことにより、各部の状態や数値を知り、冷凍機の設計や運転状況の判断に応用することができるp-h線図(ピー エイチ センズ)について解説します。
p-h線図(pressure-enthalpy chart、別称:モリエル線図/圧力-比エンタルピー線図)は、冷凍機内の冷媒の動きがわかるグラフです。
縦軸は対数目盛で圧力(p)を表し、上に行くほど圧力(MPa)が高くなります。
横軸は比エンタルピー(h)で、冷媒の質量1kgあたりが持つエネルギー(kJ/kg)を表しています。
このグラフ上に、温度(t)、乾き度(x)、比体積(v)、エントロピー(s)を直線・曲線で表示します。冷媒ごとに特性が異なるため、冷媒それぞれにp-h線図があります。
下記は、単段圧縮の冷凍機の冷凍サイクルとp-h線図を簡略化した図です。実際のp-h線図は多数の細かな線で数値が記されています。
冷凍サイクルにおける冷媒の4つの圧力・状態変化行程
p-h線図を理解する上で重要なのは、圧縮行程のヘッドとリフトの高さです。ヘッドは「コンプレッサの凝縮圧力と蒸発圧力の差」、リフトは「冷水出口と冷却水出口の温度差≒冷媒温度差」とのことで、冷凍機の効率に大きな影響を与えます。冷凍機の設計や運転管理のための動力計算などに、p-h線図は大変重要な役割を担います。
トレインの冷凍機は二段圧縮、三段圧縮を採用しており、非常に優れた冷凍サイクルを実現しています。
液体と気体が混合した状態の冷媒が蒸発器に入り(1)、器内で冷水から熱を吸収し蒸発気化します(2)。
蒸発器から流れ込んだ冷媒ガスは、一段目の圧縮機で加圧されます(3)。
一段目を通過した冷媒ガスはエコノマイザの低圧側からの冷媒ガスと混合され、二段目に流れ込みます。この冷媒の混合は、ガスの持つエンタルピーを低下させる動きをしています。そして二段目によってさらに加圧されます(4)。
二段目を通過した冷媒ガスは、エコノマイザの高圧側からの冷媒ガスと混合され、三段目に流れ込みます。この冷媒の混合は、二段目と同様にガスの持つエンタルピーを低下させ、三段目でさらに加圧されます(5)。
凝縮器に流れ込んだ冷媒ガスは、蒸発器で吸収した熱と圧縮に要した熱を冷却水に放出し、液冷媒になります(6)。
凝縮器を通過した液冷媒は、最初のオリフィスを通過しエコノマイザの高圧側に入ります。P1の圧力まで減圧され、この時に少量の冷媒が蒸発します(7)。
高圧側を通過した液冷媒は二番目のオリフィスを通ってエコノマイザの低圧側に入ります。P2の圧力まで減圧され、この時に少量の冷媒が蒸発します(8)。
そして、最後のオリフィスを通って元の蒸発器に戻ります(1)。
エコノマイザを利用した減圧後の気液分離のメリットは、冷凍効果をRE’からREまで向上させ、動力を低減できる点にあります。そしてp-h線図で、どの程度の冷凍効果があるのかを確認することができます。