冷凍空調業界における低GWP冷媒への転換状況 ~家庭用エアコン・業務用空調機・大型冷凍空調等~

地球温暖化対策の一つとして、空調機や冷凍機に広く使用されているGWP値(地球温暖化係数)の大きいHFC冷媒の削減が求められています。そこで今回は冷凍空調機器の各用途別に、現在、主にどのような用途にHFC冷媒が使われているのか、そして今後どのような冷媒へ転換されていくのかを解説します。

HFC排出量の機器別割合

フロン類使用機器別HFC排出量の内訳は下記の通りです。

「空調機器」が58.3%と過半数に上り、次に「冷凍冷蔵機器」が32.7%と続きます。特に割合の大きい家庭用エアコンや業務用エアコン、業務用空調機や大型冷凍空調などを購入される際は、低GWP冷媒やノンフロン冷媒を選択するよう努める* 必要があります。

  • * 平成26年12月10日発行の、経産省・国交省・環境省告示第87号に記載

 

フロン類使用機器別のHFC排出量

file
27,654千トン-CO2 (2012年)

用途別機器のHFCから低GWP冷媒への転換状況

各用途別機器のHFCから低GWPへの転換状況はどうなっているのか、代表的機器の転換状況をみていきましょう。

file

家庭用エアコン、業務用空調機の冷媒候補R-32を使用した製品はすでに商品化されていますが、さらに低GWPを実現する冷媒の開発が期待されています。また、実用化の開発段階において、各種研究機関で微燃性の課題が検証されています。

大型冷凍空調の代替候補R-1234zdやR-1234yfは、2L(微燃性)冷媒であり、使用する際は換気のためのファンの設置や、万一の冷媒漏えいに備えたセンサー、警報の設置が必要になります。このことは、日本冷凍空調工業会の施設ガイドラインにも示されています。さらに「高圧冷媒」であるため、高圧ガス保安法に準拠した設置や運用が求められます。

一方トレインでは、R-410Aの代替としてDR-55 (R-452B) * を使用することを計画しています。また、ターボ冷凍機に採用するR-1233zdとR-514Aは、いずれもノンフロン・低圧冷媒・不燃性であるため、フロン排出抑制法、高圧ガス保安法の適用外、かつ微燃性冷媒のように設置の際に特別な対策を要さないという特長を有し、低GWP化にあたりユーザーにとって非常に負担の低い製品を展開しています。

  • * DR-55(R-452B)使用製品の国内発売は未定

各用途で進む低GWP冷媒への転換

新冷媒への転換が進められている機器のうち、カーエアコン、大型冷凍機(倉庫)、冷凍・冷蔵ショーケースにおいても、CO2(二酸化炭素)やNH3(アンモニア)といった自然冷媒が採用されるなど、冷媒のノンフロン化が進んでいます。低GWP冷媒の候補として2L(微燃性)冷媒が多く挙げられていますが、使用に際するガイドラインが設けられるなど、実際の運用に際する環境も整いつつあります。ただし2L冷媒はそのリスク故に、設置の際の条件として付加的設備が必要となるため、ユーザーとしては留意が必要です。

▶ トレイン製ターボ冷凍機

注:R-1233zd、R-1234ze、R-1234yf、R-514A のGWP値はIPCC5次レポート(100年値)、その他冷媒のGWP値はIPCC4次レポート (100年値) に基づく

参考:一般社団法人 東京都冷凍空調設備協会「フロン使用機器 最新の動向