環境危機時計~地球環境悪化の危機感は2018年より1分戻り「9時46分」に

地球環境の悪化に関する危機感を時計の時刻で表す「環境危機時計」が、2019年は昨年と比べ1分戻り「9時46分」となったことが発表されました。

今回は、先日発表された2019年の環境危機時計の結果と共に、これまでの経緯や現在の地球環境危機の焦点を探ります。

 

環境危機時計とは

環境危機時計とは、公益財団法人 旭硝子財団がリオデジャネイロで地球サミットが開かれた1992年に開始したもので、環境問題に造詣の深い世界中の政府や民間の有識者を対象とする「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」結果の分析を元に、人類存続に対して抱く危機感の深刻さを時計の針で表示するものです。時計は世界平均と、日本、オセアニア、北米、中米、南米、アジア、西欧、アフリカ、中東、東欧・旧ソ連の10地域のものが毎年公表されています。

時計は「0時1分」をスタートとし、針が一周して戻ってくる「12時0分」までの時刻で表現されます。

地球環境の危機に関して、0時から3時までは「殆ど不安はない」、3時から6時までは「少し不安」、6時から9時までは「かなり不安」、9時から12時までは「極めて不安」な状態を示します。

 

 

2019年の環境危機時計

 

世界平均

2019年の世界平均の時刻は、「9時46分」となりました。2018年は「9時47分」、2017年は「9時33分」で、2018年の前年比14分の進みは、1992年の調査開始以来、最も進んだ結果でした。

アンケート回答者が危機時刻を記入するに当たり、念頭におかれたのは「1.気候変動」「2.生物圏保全性(生物多様性)」「3.陸域系の変化(土地利用)」「4.生物化学フロー(環境汚染)」「5.水資源」「6.人口」「7.食糧」「8.ライフスタイル」「9.社会、経済と環境、政策、施策」の9項目です。

このうち、最も深刻だと思われる環境問題として選ばれた上位2項目は、「気候変動」が30.0%で最多、次いで「生物圏保全性(生物多様性)」が13.6%と続き、昨年と同じ順位でした。

改善の兆しがある項目として最も多く選ばれたのは、「気候変動」(25%)で、次いで「社会、経済と環境、政策、施策」(17%)、「ライフスタイル」(13%)でしたが、「全く改善の兆しはない」という回答も17%ありました。「気候変動」への取組みについては、「一般の人々の意識」は「政策、法制度」や「資金・人材・技術・設備」より改善されているという回答が得られました。

日本

日本の2019年の結果は「9時39分」となり、2018年の「9時31分」と比べて8分進みました。2017年は「9時11分」、2016年は「9時3分」、2015年は「9時9分」だったことを見ると、日本では年々、危機感が急速に高まっていることが分かります。

その他の地域

その他の地域で見ると、最も危機感が高く、針が進んでいる地域はオセアニアの「10時31分」と北米の「10時30分」で、次いで西欧の「10時6分」でした。また10地域中、アジアとアフリカの2地域のみで針が戻り、他の全地域では針が進みました。

これまでの環境危機時刻の推移

過去からの環境危機時刻の推移の中で、特徴的な年の背景を振り返ります。

1992年からの推移

まず1992年からの大まかな推移を見てみると、世界平均の環境時計は次のように針が進み、確実に不安度が高まっています。

1992年:7時49分

2000年:8時56分

2010年:9時19分

2018年:9時47分

2019年:9時46分

調査が開始された1992年から2019年までの26年間で1時間57分時刻が進みました。

 

2007年、日本は世界の時刻より進んでいた

今から12年前の2007年の世界平均の時刻は「9時31分」、日本の時刻は「9時34分」で世界平均より4分進んでいました。つまり、この頃は日本の地球環境に対する危機感は世界より高い結果となっていました。京都議定書が議決された1997年以前は、日本の針は世界より10~40分ほど遅れていましたが、その後、針は急速に進んでいます。

 

最も世界の時計の針が進んだ2018年

2018年は、前年2017年の「9時33分」と比べて14分進んで「9時47分」となり、1992年の調査開始以来、最も懸念の強まりが見られると公表されています。

その背景には、トランプ米大統領が前年に就任し、地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱を表明するなど、米国の環境政策が大幅に後退したことがあるといわれています。

 

【出典】

公益財団法人 旭硝子財団「環境危機時計

公益財団法人 旭硝子財団「第28回「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」調査結果