壮大なスケールの植物園の環境を支えるトレインの制御ソリューション

シンガポールの「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(GBB)」にある世界最大級の植物園である2棟の低温温室には、トレインの高効率ターボ冷凍機(1000冷凍トン)4台と制御ソリューションが導入され、その環境を支えています。

このターンキー(*)  プロジェクトは、パフォーマンスの最適化による省エネにより、コスト削減率、ランニングコストの点から、GBBオーナーとコンサルタントの期待に十分に応えることができました。

(*) ターンキー:設備の据付・試運転など、キーを回すまでの段階まで売り手側が引き受けること

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(GBB)とは

シンガポール政府のプロジェクトの一環で、マリーナ・ベイの101ヘクタールの埋立地に10億シンガポールドル(約800億円:\80/Sドル)の予算が投じられ建設された壮大なスケールの植物園です。地中海の植物と涼しく乾燥した半乾燥熱帯地域の環境を模した「フラワードーム」と、涼しく湿気の高い熱帯山岳地帯の環境を模した「クラウドフォレスト」の2棟で構成されています。

 

GBBの課題

GBBは、ガーデン全域に渡って、すべての気候に関するエデュテイメント(教育的な娯楽)を提供することを可能としながらも、高効率エネルギーシステム施設の実現を目指していました。2つの温室において、来場者にとっての快適性と草花や植物相の育成・成長に適した環境の両面を提供するために、複数の先進的な省エネシステムが設計されました。

提案内容

トレインはGBBオーナーとコンサルタントと共に、さまざまな高効率システムの技術的な提案と制御の方向性について話し合いを持ちました。そしてトレインは、高効率ターボ冷凍機、吸収式冷凍機、エアハンドリングユニット(AHU)、ファンコイルユニット(FCU)と、トレインの制御システム トレーサーサミットBASからなるユニークな提案を行いました。この提案は、温室のプロトタイプでのデータ収集の実績に裏付けされた信頼性の高いものでした。

トレインの制御ソリューション

 

1.  チラープラントの最適化

チラープラントコントロール(CPC)で省エネを実現

GBBの運営における最も重要な課題は、温室とその他の施設で最大のエネルギー消費をもたらしているチラープラントの省エネの実現でした。このプロジェクトはシンガポール建築建設局(BCA)グリーンマーク制度のプラチナクラスに分類されているため、チラープラントのシステム効率は0.6 kW/RT以上である必要がありました。

そこで、トレーサーチラープラントコントロール(CPC)が採用され、施設の省エネを実現しました。トレインのCPCは、温室の負荷変動に応じて計算し、吸収式冷凍機を基本ベース機としてターボ冷凍機をスイング運転する最適な時間を算出しコントロールしています。

 

2.  バイオマスコジェネレーションシステム

コンスタントに110℃の温水供給温度を保つことが可能に

剪定枝や木材廃棄物などを主燃料とするバイオマスシステムで作られる温水は空調のプレクール(予冷)する吸収式冷凍機用と液式デシカントシステムの外気除湿(LDCS)用に使われます。主として、5.4 MWはLDCSの暖房負荷用に使われ、残りは吸収式冷凍機に使用され、そのコントロールをトレーサーが担っています。

また、空調の負荷変動と吸収式冷凍機の運転 /停止のサイクルがあるため、両方のシステムに110℃の温水を常に供給する課題に取り組みながら運用しています。

*バイオマスコジェネレーションシステム:バイオマス(再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの)をコージェネレーションの燃料として利用し、発電や給湯などを行うエネルギー供給システム

 

3.  ソーラートラッキングとブラインド制御システム

温室のブラインド制御で温度・湿度と快適性の制御に成功

温室の植物の成長と理想的な快適性を維持するためには、温室のブラインド制御が欠かせません。この温室のブラインド制御は、トレインのトレーサーサミットとソーラートラッキングの通信にインターフェース(Modbus)が使用され実施されました。温室内の効果的な場所に「温室内気候ステーション(Indoor Weather Station)」が設置され、温度、湿度と快適性をモニタリングしています。

 

4.  換気システムの制御

換気システムを制御し、外気温度、湿度、雨量、風量のモニタリングを実現

温室のガラス天井面に取り付けられている、換気システムは、日中の室内温度が外気温度より6℃上昇した場合に作動して開きます。雨天時は閉じたままです。これについては「屋外気候ステーション(Outdoor Weather Stations)」が外気温度、湿度、雨量、風量をモニタリングしています。

 

5.  液体デシカント空調システム(LDCS)

高温水バルブとKathene(液体吸収剤)バルブのモニタリングを実施

エアハンドリングユニットを通過し温室へ供給される外気の除湿に液体デシカント空調システム(LDCS)が使用されました。除湿後の湿度が設定値より高い場合、追加のLDCSが起動され除湿を行います。このためには、より多くのKathene(液体吸収剤)が必要とされるため、大量の温水供給が必要になります。そこで、LDCSと、高精度なBAC Net通信で結ばれたBASインターフェースにより、高温水バルブとKatheneバルブをモニタリングする仕組みを導入。このモニター情報はLDCSの能力を確実に最適化するために、オペレーターにとって非常に重要な情報となっています。

導入結果

このターンキープロジェクトは、トレインの空調と風量循環に関する豊富な経験と知識により実現することができました。そしてこれは、トレーサーBASと、これに組み合わされた高効率なシステムからなるソリューションを、設計の初期段階から提案できたためにもたらされた結果です。

GBBの温室環境は、現在でも快適な状態が維持されており、一般客からも「再び訪れることを楽しみにしている」という感想が多く挙がっているといいます。このことは、トレインのソリューションが支える温度制御の成功を意味しています。